保有銘柄のひとつである(株)Minoriソリューションズ(3822)がTOB(株式公開買付)されたオザワです。
2019年10月30日、SCSK(9719)が(株)Minoriソリューションズ(3822)に対してTOBを行うと発表しました。
SCSK、Minoriを1株2700円でTOB 完全子会社化へ【日本経済新聞】
SCSKは30日、Minoriソリューションズ株を1株2700円でTOB(株式公開買い付け)すると発表した。
出典:日本経済新聞
完全子会社化し、データ分析などを活用する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」分野などでの成長につなげる。
TOBが成立すればMinori株は上場廃止となる。買い付け期間は31日~12月12日で、買い付け価格は同日の東証終値を21.7%上回る水準となる。
Minoriは同日、SCSKの実施するTOBに賛同すると発表した。
これを受けてMinoriソリューションズの翌日31日の株価は、公開買付価格2700円に近い2698円の終値のつけました。前日比+479円(+21.59%)の上昇です。
今回の記事では、
- 「持ち株がTOBされたらすべきこと」
- 「MinoriソリューションズのTOBのケース」
について解説していきます。
持ち株がTOBされたらすべきこと
持ち株がTOBされた場合、まず最初にチェックすべきポイントは5つあります。
- 公開買付価格の確認
- 全部買付か一部買付か
- 買付株数の上限と下限
- 公開買付代理人
- 公開買付期間
公開買付価格の確認
なによりもまず確認したいのは公開買付価格です。TOBの場合、現在の株価にプレミアムをつけた公開買付価格になるのが普通です。市場より安い価格で募集しても誰も売ってくれません。
全部買付か一部買付か
公開買付価格を確認したら、次は全部買付か一部買付かを確認しましょう。ここは重要なポイントです。全部買付と一部買付では、その後の株価の動きが違ってきます。
全部買付の場合
TOBに応募された株式を全部買付する場合、株価はTOB価格に限りなく近づいていきます。TOBに申し込むも良し、市場で売却するも良しです。どちらも一長一短があります。
TOBに申し込むメリットは、公開買付価格で買い取ってもらえる&売買手数料がかからないことです。
デメリットは株式移管が必要な場合は面倒なうえ移管手数料がかかることです。また、公開買付期間が終了するまで待たなければならないので現金化するまで時間がかかります。
市場で売却するメリットは、即時換金して他の投資に回せることや株式移管の手間がないことです。
デメリットは公開買付価格よりも少し安い価格でしか売却できないことです。売買手数料もかかります。
一部買付の場合
一部買付の場合、株価はTOB価格よりも幾分ディスカウントされた価格までしか上昇しません。
理由は、TOBに申し込んだ保有株すべてが公開買付価格で買付されないリスクが、一部買付TOBには存在するからです。一部買付には上限があるのです。
買付上限を超えた応募があった場合、按分比例方式によって買付する株式数が決定されます。
あん分計算(株式公開買付(TOB)) 【カブドットコム証券】
按分比例方式によって買付株数が決まってしまうということは、仮にTOBに1000株応募しても半分の500株しか買付されない事態があるということです。TOBから漏れてしまった残りの500株は、市場で売却するほかありません。
しかし、TOB終了後には同じように買付に漏れた投資家たちが売りに出してきます。そのため売り圧力が大きくなり、思ったような価格で売ることができない可能性があります。
実際、TOB終了後はTOB開始前の価格以下に株価が下がってしまってしまうことが往々にしてあります。
こんなことならTOB期間中に持ち株全部を市場で売却しておくべきだったと後悔する人も少なくありません。ディスカウント価格で売り捌いていた方が利益が残るケースがあるのが、一部買付TOBの難しいところです。
一部買付TOBでは、どの程度買付してもらえるのか予想して応募する必要があります。予想の精度がリターンを大きく左右します。
TOBで買付される分と買付されずTOB終了後に市場で売却する分の合計が、TOB期間中に市場ですべて売却してしまう金額より多い場合のみ、一部買付TOBに応募する意味が生まれます。
つまり、買付率とTOB終了後の株価、二つの予想が必要になるのです。
一部買付TOBに応募するかしないか、この判断はとても難しいです。TOBの利ざや狙いで利益を出している投資家でさえ、判断を誤ることが少なくありません。予想の困難さが利益の源泉とも言えます。
私が以前保有していたテクノアソシエ(2019年5月にTOB)も買付上限のある一部買付TOBでした。そのときは迷いに迷った挙句、市場で売却するという決断を下しました。
買付株数の上限と下限のチェック
買付株数の上限と下限のチェックも重要です。これも全部買付の場合と一部買付の場合で上限と下限の設定が異なります。
全部買付の場合
全部買付TOBの場合、上限はありませんが下限が設定される場合があります。TOBに応募される株式数が下限に満たない場合は、TOBが中止になる可能性があります。
TOB対象会社の完全子会社化を目指す場合は、すべての株式を集める必要があるため全部買付TOBを行います。
一部買付の場合
一部買付TOBの場合は、上限もしくは上限と下限の両方が設定される場合があります。
買付予定上限数を超えた場合は、先ほど説明した通り按分比例方式による抽選となります。下限に満たない場合はTOBが中止になる可能性があります。
一部買付TOBは、子会社化予定の対象会社をTOB後も上場維持させる場合などに行われます。
公開買付代理人と公開買付期間のチェック
TOBの応募は公開買付代理人に指定された証券会社でしか出来ないため、それ以外の証券会社の口座で保有している対象株式については移管する必要があります。
株式移管にはある程度時間がかかります。TOB締切日までに間に合うように、余裕を持って株式移管手続きを済ませましょう。
証券会社によっては、郵送での書類のやり取りや店舗で直接申し込まなければならない場合があります。
一部買付TOB期間終了後は株価が大きく下がることが多いので、TOB申し込み期間は把握しておきましょう。
Minoriソリューションズ(3822)TOBのケース
現在TOB進行中のMinoriソリューションズ(3822)で、5つのTOBチェックポイントを確認していきましょう。
5つのチェックポイントの確認
- 公開買付価格は2700円
- 全部買付
- 買付数量の下限は、4,839,600 株(所有割合:56.21%) 。上限無し。
- 公開買付代理人大和証券株式会社
- 公開買付期間2019年10月31日~2019年12月12日
公開買付価格は2700円
公開買付価格は2700円です。株価はすでにサヤ寄せしており、2019年11月1日終値が2697円となっています。
2696円~2698円の間で揺れ動いている感じです。TOB発表翌営業日から出来高が大きく膨らんでいます。
全部買付
公開買付価格と株価がほぼ同値になっていることから明らかなように、全部買付です。一部買付ならばここまで公開買付価格に株価が寄ることはありません。
公開買付数の下限
公開買付数下限は4839600株に設定してあります。主要株主との交渉はすでに済ませており、TOBへの応募契約も結んでいるので、問題なく下限を超えてくるものと思われます。
TOB成立はほぼ間違いないでしょう。TOBが成立すれば、MinoriソリューションズはSCSKの完全子会社となり上場廃止になります。
完全子会社化に反対してTOBに応募せずに持ち続けていても、二段階買収によって自動的に換金されてしまいます。
二段階買収 (にだんかいばいしゅう / Two-Tier Takeover Strategy)【YCG経営ナレッジ】
二段階買収とは、対象会社の全ての株式を取得するに際し、1段階目の買収により対象会社の全ての株式を取得することができない場合において、2段階目の買収により対象会社の全ての株式を取得すること。
出典:YCG経営ナレッジ
上場会社である対象会社を完全子会社化する場合、複数の方法が考えられるが、1段階目の買収として公開買付けを実施し、2段階目の買収として全部取得条項付種類株式を利用したスクイーズ・アウトの手続を実施するのが一般的である。
公開買付代理人
公開買付代理人は大和証券株式会社です。私がかつて体験したテクノアソシエTOBの際も、公開買付代理人は大和証券でした。
大和証券はTOB御用達証券会社なのでしょうか?
公開買付期間
公開買付期間は12月12日までです。TOBに申し込む方で大和証券に口座をお持ちでない方は、できるだけ早く口座開設しておきましょう。口座開設にも時間がかかります。
まとめ「Minoriソリューションズは市場売却でOK」
SCSKによるMinoriソリューションズのTOB概要です。
- 公開買付価格は2700円
- 全部買付
- 買付数量の下限は、4,839,600 株(所有割合:56.21%) 。上限無し。
- 公開買付代理人大和証券株式会社。
- 公開買付期間2019年10月31日~2019年12月12日
SCSKによるTOBはほぼ100%成立します。TOB合戦などが起こる余地もないでしょう。
どうしても2700円で売りたい人はTOBに申し込むしかありませんが、数円安くても構わない&売買手数料が気にならない人は市場で売ってしまう方が良いでしょう(TOBに応募して買付される場合、売買手数料がかかりません)。
公開買付期間終了が1か月以上先というのは長すぎます。TOBのために1か月株式を寝かせておくくらいなら、さっさと換金して別の銘柄の購入費用に充てた方がベストだと思います。