無風選挙と思われていた参院埼玉補選に嵐が吹き荒れそうだ。
2019年10月10日に告示日を迎える参議院埼玉県選出議員補欠選挙。当初、N国党からは豊田真由子氏が公認候補として立候補するのではないかと囁かれていた。
残念ながら豊田真由子氏擁立とはならなかったものの、次の一手は驚くべきことに立花孝志党首自身が出馬するというサプライズだった。
立花孝志氏は現役の参議院議員だ。参議院議員埼玉補欠選挙に出馬するためには、国会議員を辞職する必要がある。
2019年7月21日に行われた参議院議員選挙に当選してから、わずか2か月半。二瓶文徳議員脅迫事件で任意聴取を受けた際、「有罪になれば辞職する」と発言していた立花氏だが、思わぬ形で参議院議員の職を辞することとなった。
ネット上では肯定派と否定派で意見が分かれている
ネット上では、今回の立花氏の議員辞職について否定的な声が少なくない。任期をほぼ6年残している参議院議員を辞めて、任期約3年の参議院議員補欠選挙に鞍替え立候補する。
真相を知らない人からすれば理解し難い行動に見えていることだろう。そこで議員辞職肯定派と否定派の声をツイッターで確認してみた。
議員辞職肯定派
全ての国会議員と有権者はよく見ておくといい
— 七篠ひとり (@w4rZ1NTzltBKRwQ) October 8, 2019
国会議員になることが目的ではなく、公約実現の手段と考えるからこそ、こういう突拍子もない方法を思いつき、そして行動に移せることを#立花孝志
https://t.co/k4DUbh4ryK
議員辞職否定派
なぜ立花孝志氏は参議院議員を辞職するのか?
普段からN国党の動向を追っている人たちでさえ、立花孝志氏が参議院議員を辞めて埼玉参院補選に出馬することには、かなりの衝撃を受けている。
N国党や立花氏が嫌いな人たちはより混乱していることだろう。彼らは立花氏が発信するyoutube動画を見ないので、支持者よりもはるかに少ない情報しか持っていない。立花氏の行動が理解できない。
メディアやマスコミが作り上げた叩きやすい立花孝志像だけが、彼らの判断の根拠だ。しかし、そこに真実はない。立花孝志の哲学を知れば、立花氏の行動に対する疑問は氷塊する。
立花氏はNHKスクランブル化実現を最優先に動いている
外野から見ると、立花氏の行動は一貫性がないように見えていることだろう。マツコデラックスに噛みついたり、離党した地方議員を脅迫したり、青汁王子や有名youtuberとコラボしたり。
しかし、立花氏はどんな時も、たったひとつの揺るがぬ信念に従って行動している。それはNHKスクランブル化だ。N国党の唯一の公約(マニフェスト)である。
現状、N国党には国会議員が二人しかいない(立花孝志・丸山穂高)。参議院に限れば議席1つきりだ。数が力になる民主主義社会において、たった1議席では正直何もできない。
どんなに立派な公約を掲げていても、それを実現できないならば絵に描いた餅だ。実現できない公約に価値はない。公約を達成できなかった政治家は、詐欺師と誹り(そしり)を受けても仕方ないだろう。国民との約束である公約というものはそれほど重いものなのだ。
しかし、選挙で当選したいがために、実現不可能な聞き心地の良い公約ばかりを並べる政治家によって、公約の価値は地に堕ちてしまった。
「政治家は公約を守らない」と国民は不信に陥っている。公約なんて守られなくて当たり前という空気が社会に蔓延している。それを立花孝志は良しとしない。
常日頃、立花氏が党勢拡大を口にしているのは、数を集めない限り公約実現が不可能だからである。すべての行動は、NHKスクランブル化に通じているのだ。
NHKスクランブル化の鍵は憲法改正発議
では、党勢拡大して立花氏は何を狙っているのか? その答えは、立花氏がNHKスクランブル化までの道筋を具体的に説明したロードマップを知ると理解できる。
立花氏が青写真として描いているのは、憲法改正発議を与党との交渉に使う一手だ。安倍首相は内閣総理大臣最後の花道として、憲法改正に執念を燃やしている。
しかし、現状は与党だけでは憲法改正発議に必要な参議院議員の3分の2を満たせていない。ここに立花氏は目をつけている。「NHKスクルランブル放送化するなら、憲法改正発議に賛成する」という与党に対する交渉カードをどうしても手に入れたいのだ。
そのためには、N国党参議院議員の数をもっと増やしておかねばならない。 喉から手が出るほど欲しい参議院議員の議席。それを獲得するチャンスが、参院埼玉補欠選挙だ。
憲法改正と聞くと不安になる人が多い。しかし、国会議員が決めることができるのは、あくまで憲法改正発議、「憲法改正しませんか?」という投票を行う決定をするまでだ。
実際に憲法改正するかどうかは、国民投票に委ねられる。国民投票とは文字通り、有権者全員で決めるということだ。国民の過半数の賛成がなければ、憲法を改正することはできない。
憲法改正に反対の人が多ければ憲法改正はされないわけだし、憲法改正発議自体は何の問題もない。逆に国民の過半数が憲法改正に賛成ならば、当然に憲法改正されるべきだろう。民主的な社会ならば当然のことだ。
憲法改正発議を与党との取引に使うのは極めて合理的だ。現状、それ以外の方法でNHKスクランブル化実現の道筋は見えない。
「選挙と政治の分離」で議席を獲得しに行く
埼玉参院補選では、選挙を勝ちに行ける立候補者がどうしても欲しかった。しかし、要請していた候補者すべてに断られてしまったため、立花党首自ら埼玉参院補選に立候補する決断に至った。
立花氏が常々口にしているのが、選挙と政治の分離だ。この二つに問われる能力は違うというのが立花氏の持論だ。
選挙と政治の分離とは、「選挙が得意な人が選挙で票を集めて当選。当選後は辞職し、政治が得意な人にバトンタッチ。選挙が得意な人はまた別な選挙で議席を獲得しに行く」という手法だ。
「選挙と政治の分離」のアイデアには、ホリエモンも驚嘆し、「立花さんの発明だ!」と賛辞したほどだ。
今回の立花氏の行動は、「選挙と政治の分離」を実際に行ったにすぎない。選挙に打って出る立花氏が参議院議員を辞職することで、N国党比例名簿2位の浜田聡氏が繰り上げ当選となる。政治はひとまず浜田聡氏に任せたというわけだ。
浜田氏は京都大学医学部出身の放射線科専門医だ。浜田氏がどういう人物かは、埼玉県知事選に立候補した際の政見放送を見てもらいたい。
N国党関係者は過激人物しかいないようなイメージを持たれているが、浜田聡氏のような落ち着いた人物も存在することを覚えておいて欲しい。
立花氏が参議院議員を辞職するのは、NHKスクランブル化実現のためには参議院の議席獲得が至上命題であり、そのチャンスがあるからだ。
参院埼玉補選対立候補の上田清司氏について
参院埼玉補選は、N国党立花孝志氏と無所属上田清司氏の一騎打ちの様相を見せている。立花氏と一騎打ちをする上田氏とは一体どんな人物なのだろうか?
公党8党のバックアップを受ける上田清司氏
上田氏は表向き無所属で立候補を表明しているが、実際はN国党を除く公党8党(自民・公明・立憲・国民民主・維新・共産・社民・れいわ)のバックアップを受けている状態だ。
参院埼玉補欠選挙は、N国党VS公党8党による戦いなのである。上田清司氏に勝つことがどれほど難しい事か容易に想像できるだろう。いかに立花氏といえど厳しい。正直なところ、当選する確率は相当低いと予想している。
2015年に行われた埼玉県知事選挙で、上田清司氏は89万票を獲得して当選した。今回はさらに公党8党がバックアップしてくる。既得権益に群がる固定票が100万票前後は間違いなくあるだろう。
多選自粛条例破りで埼玉県知事選挙4選
浜田聡氏が埼玉県知事選に出馬した際の政見放送でも名前が出てきた上田清司氏。多選を認めない公約を掲げて2003年に埼玉県知事に当選し、2004年には任期を連続三期までと定めた「多選自粛条例」を都道府県で初めて制定した。
しかし、その11年後の2015年。上田清司氏は自ら定めた「多選自粛条例」を破り4選に出馬し当選。結局、4期16年にわたり埼玉県知事にしがみついた。
埼玉の上田知事、4選出馬へ 多選自粛条例破り【朝日新聞デジタル】
重要なことなのでもう一度書いておく。「多選自粛条例」は、上田氏自身が公約に掲げ制定した条例なのである。
公約破りを平然とやってのける上田氏の姿は、公約を絶対使命と受け止める立花孝志氏と対照的な政治家であることを示している。
埼玉県知事と参議院議員の職業チェンジ疑惑
上田氏には大野現知事と組んで職業チェンジ、具体的に言うと、知事の椅子と参議院議員の議席を交換した疑惑があると立花氏は指摘している。
今回の参院埼玉補欠選挙は、大野現知事が埼玉県知事に立候補するため参議院議員を失職し、その欠員を埋めるために行われる選挙だ。
大野現知事は、2019年6月5日の段階で埼玉県知事選挙への立候補を表明していた。しかし、参議院議員の辞職願を提出したのは2019年8月1日だった。辞職願の提出がこの日になった理由は、「参院選中は議員の半数が欠ける状況となるので危機管理上問題があった」ためとしている。
2019年参議院議員選挙の告示日は7月4日だ。どうせ埼玉県知事に出馬することが決定しているのだからもっと早くに辞めておけば、2019年参議院議員選挙の際に、大野氏が失職することで生じる欠員分も合わせて選挙を行うことができたのだ。
つまり、今回の参院埼玉補欠選挙は、大野現埼玉県知事の辞職時期によっては行う必要がなかった選挙なのだ。
しかし、参院選前に大野現知事に辞職されると困る人がいた。上田清司氏だ。上田氏は知事退任後、もう1度国政に返り咲きたい気持ちがあった。
上田氏は8月の埼玉県知事選挙で大野現知事を自分の後継者として応援することと引き換えに、大野現知事が参議院議員を辞職するのを参院選後に遅らせた。10月に補欠選挙が行われるよう仕組んだのだ。
この件についてストレートに指摘している元豊島区議・橋本久美氏のツイートを読んでみて欲しい。
知事と国会議員の職業チェンジ、ここまで国民を馬鹿にしたやり方に埼玉県民は何も感じていないのだろうか? ちなみに、今回の参議院埼玉補欠選挙には、22億円以上もの税金が投入されている。
71歳にして国政への執念を燃やす既得権益派である上田清司氏と、NHKを始めとした既得権益をぶっこわす革命家・立花孝志氏。
上田氏の政治家人生の集大成になるであろう参院埼玉補欠選挙。果たして埼玉県民はイエスと上田氏の背中を押すのか、それともノーと突き返すのか。すべては埼玉県民の意思に委ねられている。
おまけ「N国党をぶっこわす方法」
N国党や立花孝志が大嫌いにもかかわらず、ここまで読んでくれた方に朗報がある。それは「N国党をぶっ壊す方法」だ。私の長いお話に付き合ってくれたせめてものお礼だ。確実にN国党をぶっ壊せる方法なので、N国党嫌いな方こそ是非試してみて欲しい。